【症例の紹介】
指がシビレるのは神経に原因があるのですが、問題は神経がどの部位で侵害されているかです。例えば脳、頸椎、胸郭出口、肘部管、手根管、ギヨン管などです。
また、神経はそれぞれに支配領域があり、出現している症状の場所でおおよそどの神経に影響が出ているのか判断できます。
シビレを感じるのは感覚神経と呼ばれる末梢神経ですが、この神経は求心方向に一方通行です。なので、例えば肘で神経を絞扼し症状がある場合は、肘から先がシビレます。しかし肘より体の中心に近い部位には症状はでません。
これらの法則を理解して原因を判断し施術にあたります。
ケース1:手根管症候群(親指、人差し指、中指と薬指の半分がシビレる)
70歳代男性です。就寝していると朝方に右手3本の指(1,2,3指)に痺れがひどくなり目が覚めるということです。
整形外科にて頸部のレントゲンを撮影され椎間孔(脊髄から末梢神経が出る脊椎間の穴)の狭窄を指摘され頸椎症による正中神経障害と診断を受けられました。頸椎牽引と血流の改善を目的とした内服薬を処方され経過観察されていましたが症状改善の兆しがないということで、患者さんのかかりつけ内科医より拙院を紹介され来院されました。
問診では
- 朝方にシビレが強くなる
- 長時間自転車をこいでいても症状が悪化しない(自転車のこぐ姿勢は頸部が伸展位を取るため、頸椎症が原因の手指のシビレは悪化します。)
なので頸椎に原因がある事に疑問をもち徒手検査を行いました。
Jackson compression test(-),Adoson test(-),Phalen's test(+)でした。手首に手根管と呼ばれる神経と手指の腱が束になっている狭いトンネルがあり、そこで神経が圧迫をうけると手根管症候群になります。それを疑いエコー画像で観察してみました。
●Phalen's test(手首を曲げこの姿勢のまま30秒程度で指先にシビレが現れるかを確認します、シビレがあれば陽性です。)
●模型で手根管と正中線神経の走行を示します。画面左の丸い骨(豆状骨)と右の三角に尖がっている骨(大菱形骨)がつくるスペースが手根管です。黒いチューブが正中神経です。
●画面右の真ん中上に正中神経の断面が見えますが、左(健側)と比べると丸く太くなっており偽神経腫になっていました。
現在も加療中ですが手根管への超音波の照射で症状が軽減しており施術を継続して行く予定です。しかし、それでも症状に改善が見られない場合は就寝時に手関節の屈曲ブロックを目的とした装具を作成しようかと検討しています。
(まとめ)
神経症状の原因を判断するのはとても難しいです。特に高齢の方は、手指の神経症状にしろ腰部が原因の坐骨神経症状にしろ、レントゲンやMRIの画像では必ず骨の変形や脊柱管の狭窄が写ります。ですから診断は頸椎症であり変形性腰椎症であり脊柱管狭窄症であって間違いはないのですが...しかし、患者さんが申告されている痛みの発生状況とそれらの画像で診断された疾患の特徴的な痛む状況が一致しないことが多いです。
施術にあたる際に画像か問診かどちらを考慮して施術にあたればいいのか迷う事があります。
そのような時は、両方に施術をするようべきではないでしょうか。2つの施術の体におよぼす影響が互いに拮抗しなければという条件で。