【症例の紹介】
テーピング用テープには様々な種類があり、その用途もいろいろです。
材質やテープの幅、厚みに違がいあり、また、使用される粘着剤の種類や粘着力にも違いがあります。
テーピングを施行する部位やケガの種類(捻挫や打撲などの違い)、重症度、競技種目によってこれらのテープを上手く使い分ける必要があります。
非伸縮テープ
捻挫した関節を固定するために使用します。コットンテープと呼ばれ手で簡単に裂くことができます。粘着剤はシンナー系で、長時間貼ると皮膚がかぶれて赤くなったり、水ぶくれになる事があるので注意が必要です。
様々な幅があり、足関節には1.5インチ(38㎜)、膝関節には2インチ(51㎜)、手指の関節にはもっと幅の狭いテープを使用します。スポーツの現場では最もよく使用されるテープです。
●足関節に施行した38㎜非伸縮テープの1例
伸縮テープ(ハードタイプ)
固定をすると関節の動きを制限してしまい競技に影響を与えるような場合に(例:サッカー選手の足関節)や、粘着力が必要な場合(例:剣道・柔道などの素足で行う競技選手の足部)などに使用します。
生地が分厚く粘着力がとても強いです。手で裂くことは不可能でハサミを使用します。
主に2インチ(51㎜)と3インチ(76㎜)を膝関節の固定や大腿部の圧迫に使用します。シンナー系の粘着剤ですので長時間の使用には注意が必要です。
●足関節の捻挫再発予防のテーピングの1例
ライトテープ
薄手の伸縮テープです。粘着力が弱く固定力はあまり強くないのですが、テープの浮きを押さえたり、皮膚の弱い選手に直接粘着力の強いテープが触れない様にしたい時に使用します。とても使い勝手が良く現場では重宝します。例えば、足関節内反捻挫の予防テーピングを巻く際、足にすごく汗をかく選手がいるのですが、テーピングが汗でめくれないようにライトテープで押さえます。
テープ幅は主に2インチ(51㎜)を使用します。
●足関節の非伸縮テープをライトテープで押さえている1例
キネシオテープ
アクリル系の粘着剤を使用した伸縮テープです。アクリル系の粘着剤は皮膚に優しく、シンナー系のそれと比べるとかぶれにくいので長時間貼る事ができます。しかし、水分に弱く汗で剥がれやすくなります。アクリルが体熱で溶けて時間が経過すると粘着力が増すので、運動の直前に貼るとテープが簡単に剥がれてしまいます。テープを貼るタイミングを工夫する必要があります。
DC(Dr. of Chiropractic)の加瀬建造先生がアメリカで開発された、いわゆる人工筋肉テープと呼ばれるものです。筋肉の働きをサポートする目的で筋の走行に沿って貼っていきます。日本では、マラソン選手などが膝まわりなどに貼りテレビで放映されメジャーになりました。
もともとはこのような経緯で日本に逆輸入され、筋の走行に沿って貼られていましたが、アクリル粘着剤の用途が多様なのでアンダーラップやライトテープのようにも使われるようになりました。
25㎜や50㎜、75㎜などテープ幅がいろいろあるので部位や用途に合わせて使い分けます。
●テーピングの際に非伸縮テープと皮膚が直接触れない様にアンダーラップの上にキネシオテープを巻いた1例
●肘の外側上顆炎のキネシオテープの1例
自着包帯
包帯が互いに粘着しますが皮膚とは粘着しないので、皮膚への負担がかなり少ないです。また、テーピングに比べ圧迫感も少ないので、再発予防の圧迫や固定に使用します。バスケットボール選手やバレーボール選手は、足関節捻挫の再発予防の際も強い固定を要望する事が多いのですが、バドミントン選手は強い固定を嫌いますので使用頻度が高いです。
また、足関節の痛みで腓骨筋腱炎や後脛骨筋腱炎などの腱の炎症による痛みは、皮膚を粘着剤で固定すると痛み増すことがよくあるのでそういった場合の固定にも使用します。
包帯内に粘着用のゴムが含まれるので、ラテックスアレルギーの既往がある選手には使用できません。
写真は2インチ(51㎜)と3インチ(76㎜)の自着包帯ですが、他にも4インチ(100㎜)などもあります。
足関節の固定やふくらはぎの筋の圧迫には2インチを、大腿部の筋の圧迫には3インチを使用します。
●腓腹筋肉離れの再発予防の1例
アンダーラップとレースパッド
皮膚を保護するドレッシング剤です。アンダーラップは皮膚全体を覆うために使用します。レースパッドは腱や関節の凸部などの擦れやすい場所にワセリンを塗った後に使用します。
アンダーラップを使用してのテーピングは、直接皮膚に巻いた場合より固定力が弱くなります。一般的には、皮膚に粘着スプレーを噴き直接テーピングを施行します。
●足関節におけるレースパッドとアンダーラップの施行例
その他上記のテープ以外にも様々な種類のものが各メーカーから発売されています。今までは白色やベージュ色など地味なものが多かったのですが、チームカラーに合わせてテープの色を選んだり、選手の要望で自身のラッキーカラーを貼ったりする事もあります。
●KTテープ:伸縮テープです。キネシオテープと同じアクリル系粘着剤を使用しています。キネシオテープよりも伸長し、カラフルな色のバリエーションがあります。
●膝蓋骨外反抑制用のテープの1例
ふくらはぎの筋(下腿3頭筋)の肉離れを受傷した際は、まずRICES(Rest:安静,Icing:冷脚,Compression:圧迫,Elevation:拳上,Suport:固定)を行います。2~3日間のRICESの後に、段階的に競技復帰に向けたアスリハを開始します。
アスリハの中~後期には競技的動作をプログラムに加えますが、その際に患部に不安が残る場合、テーピングやバンデージで圧迫をしトレーニングをする事があります。
使用する材料
①1.5インチ(38㎜)非伸縮テープ
②アンダーラップ
③2インチ(51㎜)ライトテープ、もしくは2インチ(51㎜)自着包帯
●キネシオテープ20cmに切り、半分ほどで2つに裂いたものを足関節背屈ブロックで使う場合もあります。
テーピングの順序(伸縮テープによる背屈ブロックを加えた例)
①痛みの程度や足関節の固定の強さを決定し、関節の角度をセットアップします。注意する点は必ず足関節が下を向いている(底屈位)でセットアップします。足関節底屈位を強調するほどテーピングの緊張が増します。
②キネシオテープで足関節背屈ブロックをします。踵から始めアキレス腱で終わります。テープの引っ張り具合により固定力が変わります。強く引っ張ると固定力が増します。
③患部を中心にアンダーラップを巻いていきます。
④腓腹筋の外と内側にアンカーテープを縦方向に貼ります。
⑤内・外側のアンカーテープを斜めに被せるように下から順に左右交互に交差させながら上まで貼っていきます。テープの目的は患部の圧迫です。
⑥その上から、横方向のテープを下から順に貼っていきます。テープの目的は、さらなる患部の圧迫です。
⑦圧迫テープが剥がれないようにアンカーテープを縦方向に貼ります。
8圧迫テープは前方がオープンな状態ですぐとれてしますので、ライトテープで圧迫テープを押さえていきます。ライトテープの代わりに自着包帯で押さえる方法もあります。自着包帯のほうが圧迫力は弱く感じます。
●前から見ると圧迫テープはつながっていません
⑨上までライトテープを巻きあげて前でテープを終えるようにして終了です。巻き終えたなら、必ず選手に強さや動きにくさ、痛み・違和感がないかを確認します。
注意点
●固定肢位は足関節底屈位で行う。
●関節の位置やテープの張力はケガの状態や練習内容で臨機応変に対応する。
●巻き終えた後に、必ず選手に違和感などがないか確認をする。
大腿前面にかかわらず、筋挫傷後の予防的テーピングの注意点は
①筋の起始停止を近づけた肢位で施行する
②圧迫の程度を患者・選手とコミュニケーションを取りながら施行する
③施行した後に必ず、血流障害がないかを確認する
④施行した後に必ず、患者・選手にフィーリングや皮膚の引っ張りなど違和感がないかを確認する
です。
①1.5インチ(38㎜)非伸縮テープ
②アンダーラップ
③2インチ(51㎜)ライトテープ、もしくは2インチ(51㎜)自着包帯
テーピングを施行する肢位
●股関節屈曲位、膝関節伸展位で行う
テーピングの施行
●痛みのある部位を中心に上下10㎝程度の幅でアンダーラップを巻く
●縦にアンカーテープを貼る。この際に、上部のテープはアンカーテープからはみ出ないように注意する
●遠位(心臓に遠い方)から、順に斜めになるように交互にテープを貼る。その際に、下縁からテープを持ち上げる様に貼ることと、テープの中心に圧がかかるようにすることが重要。
●斜めに貼ったテープの上から、さらに同様の手順で遠位から水平方向にテープを貼り圧迫を加える
●この際も、近位はアンダーラップからテーピングがはみ出さないように注意する
●縦方向に内側と外側に抑えのサーキュラーテープを貼る
●立ち上がり、大腿に少し力を入れて踏ん張り、ライトテープでホワイトテープを押さえる。この際も、近位はテープがはみ出さない様に注意する。また、ライトテープによる押さえが強すぎて違和感がある場合は、自着包帯を使用する。
大腿の近位にテープをかけると膝を屈曲した際、皮膚がテープに引っ張られカブレや創傷の原因になるので注意する必要がある。
Pump Bumpの新鮮症状は、少し触れただけでもとても痛みます。
炎症がひくまでは、この状態が続きます。過去にリンデロン(ステロイド)注射やNSAIDs(非ステロイド系消炎剤)の服用などで経過観察をしましたが、どれも効果的ではなかったです。特に、運動選手は痛みの為にプレーに支障をきたすほどでした。
結果、ラバーパッドなどで患部を覆い、触れない様にすることが必要だと判断し、施行すると経過が良かったので紹介します。
●踵の後ろに赤く腫れがあり、触れるととても痛みます。
●アキレス腱と皮膚の間にある、滑液包が炎症し腫れた状態です。
●原因は、新調した靴が硬かったり、サイズが合っていなかったりで滑液包が擦れて炎症を引き起こします。
用意するものは①レナサームと②5㎜厚のラバーパッドです。
●レナサームは、熱により軟化形成し常温で硬化するキャスト材です。
●ラバーパッドは、ホームセンターで購入できます。
レナサームとスラバーパッドをU字型に切り出し踵の形に成型します。
●レナサームとラバーパッドと張り合わせて踵に成型します。
●やや足を長めにつくり後で、適当な長さに調節します。
●実際に選手に装着し、動いてもらいU字パットがアキレス腱にあたっていないかなどのフィーリングを確認し足部分の長さを調節します。
●U字パットの足部分の長さの調節ができたら、ラバーパッドとレナサームが剥がれないように自着包帯で巻いていきます。
●U字をさかさまにし、U字パットの足部分の隙間が患部に空間ができるようにあてがいます。
●運動時はずれないように、ガードテープで固定しますが、普段は包帯や靴下の中に直接入れて使用します。
●腫れがひくこともあれば、腫れたままの場合もありますが、痛みがなくなれば使用中止です。
●ラバーパットだけだとすぐにヘタってしまい、ペラペラになるのでレナサームで硬さを補強した方が塩梅がいい様に思います。