【症例の紹介】
就寝中に突然、目が覚めるような肩の痛みが出現した。特に何もした覚えがない。このような症状の場合、肩の腱板や滑液包への石灰の沈着を疑います。石灰沈着性腱板炎や滑液包炎は中年以降の方によく見られます。レントゲンでもはっきりと存在が確認できます。
ケース1:石灰沈着性腱板炎
50歳代男性です。営業職ですが最近はデスクワークが多かったそうです。就寝中に左肩への激しい痛みで目が覚めたそうです。当日は痛みのため仕事が手につかず市販の鎮痛薬は全く効かなかったそうです。その日の夕方に来院されました。
患部に熱感があり、自動運動はほとんど不可能で右手で左手を支えていないと耐えられない様子でした。ROM検査はせずにエコーで内部を観察しました。エコーでは棘上筋内に石灰化した高エコー像が描出され石灰沈着が確認できましたので、当院の施術よりもステロイド関注が有効であろうと判断し近隣のペインクリニックに対診させていただきました。初回での関注では劇的な変化は見られませんでしたが、就寝中の激しい痛みは軽減しました。1週間は当院では施術せず三角巾で腕を吊り安静を図りました。2回の関注の後、超音波の照射とROM訓練を開始し3週目には痛みもなく日常生活動作が完全に回復しました。
●棘上筋内に白く高エコーの石灰が雲のように広がって見えます。
不思議な事に健側(右)の腱板にも石灰沈着がありましたが、以前に同様の痛みを経験されたことはないそうです。
(まとめ)
痛みの経過を観察すると、突然の痛み、熱感、数週間での回復と経過の変移が痛風発作と似ているように感じました。痛風は関節内に尿酸結晶が堆積しそれが関節内に拡散すると、免疫機能が反応し劇症的に炎症反応が現れます。私的な考察ですが石灰沈着性腱板炎も似たような機序ではないかと考えています。なので今回のケースでは、発症→1週間目までは、ステロイド関注(消炎)+NSAIDs服用(非ステロイド系消炎鎮痛薬)→2週間目まではステロイド関注+NSAIDs+ROM訓練、3週間目以降は継続してのROM訓練と経過観察によって比較的早期に解決できたのではないでしょうか