【症例の紹介】
指の第1関節(DIP)の背側(爪側)が盛り上がってきて痛むという症状は、中年以降の女性に多い訴えです。へバーデン結節(Herberden Node)と呼ばれる原因は不明なのですが、中年以降の女性と言うことでホルモンとの関係があるのではと言われています。
変形を伴う関節の痛みは、関節リウマチとの鑑別が必要になります。関節リウマチの定義は「比較的大きな関節に発症」、「1度に2関節以上対側(右・左両側)に発症し、「朝1時間以上の持続したこわばり」などでこれら症状にレントゲンでの関節の隙間の変化や変形、血液での抗体検査などで確定されます。
よくリウマチではないかと心配されるのですが、DIPはリウマチの可能性は低いとされています。それでも気になる場合は上記の確定診断の方法を説明させていただき専門医の受診をすすめさせていただきます。
現在は、残念ながら原因不明であり、特異な治療方法がありません。
ケース1:へバーデン結節(Heberden Node)
60歳代女性です。現在は、仕事をされていませんが以前は教員をされていました。数年前より手指の第1関節の背側に痛みを感じ、時には少し触れただけでも飛び上がるような痛みがあったそうです。その後、痛みは落ちついてきたそうですが変形は徐々にすすんでいるようです。
●第1関節の両側が上に盛り上がっています。
●左図:右環指第1関節の背面です。骨に棘が形成され盛り上がっています。
●右図:画面左が第1関節、右が第2関節です。当患者さんは、第1関節の変形(へバーデン結節)だけでなく、第2関節の変形(ブシャール結節)もあります。
指は伸ばすより曲げる事(ものを持つ事)が重要です。ものを持つ動作は、つかむ(grip)とつまむ(stick)があります。「つかむ」は、げんこつを握るように第1・2関節を曲げます。「つまむ」は、箸を持つように指の付け根から曲げます。「つかむ」は肘からの外来筋を、「つまむ」は手掌にある内在筋を使います。日常生活では「つかむ」より「つまむ」が重要です、なぜなら手先の細かい作業はすべて「つまむ」の動作だからです。
へバーデン結節では「つかむ」が困難になります。原因が不明であり、骨の結節形成のため根治は難しく、施術の第1目的は痛みの緩和と機能維持になります。
痛みの緩和には、超音波やスポットビームを使い血流の改善と過剰な肉芽細胞の増殖の抑制を行います。
機能維持には「つかむ」動作だけでなく、残存している「つまむ」動作の機能を維持しADLの低下を予防します。
●「つかむ」の動作訓練です。お風呂の中など温めてから行うと痛みも少ないです。
●「つまむ」の動作訓練①です。指を伸ばして開いたり閉じたりします。
●「つまむ」の動作訓練②です。親指が他の指と触れるように開いたり閉じたりします。