【症例の紹介】
離断性骨軟骨炎(OCD)はジュニア期に発症する特有のスポーツ障害です。足首・膝・肘に多く発生します。病名から骨が離断する(ちぎれる)と想像してしまいますが、実際は、軟骨下骨が血流の阻害により無腐性壊死し脱落する状態です。
競技別ではサッカーやバスケットボールのように膝を曲げた状態からの急激なSTOP & GOやカッティング動作で受傷します。投球動作のあるラケット競技や野球では肘の外側の骨に発症します。
症状は特徴的で
①受傷機転がない、
②日常生活ではほとんど痛みがでない、
③プレー中の激しい動きの際にだけ痛みがでる、
④押さえても痛くない、腫れてもいない
などです。
小学高学年から中学前期に多く発症しますが、筋力が未発達なので痛みは強く現れません、中学後期から高校以降に筋力の発達に伴って痛みが増してきます。その時点で初めて医療機関を受診されるケースが多く、病態がすでに進行しているので、ほとんど手術の適用になっていまいます。
早期発見で手術を回避できる事もありますので上記の様な症状がある場合は、できるだけ早く医療機関にかかる事をおすすめします。しかしOCDはレントゲンでは見つけにくい場合もあります、できればMRIで確定診断を受けられる方がいいのではないかと思います。
ケース1: 大腿骨内顆離断性骨軟骨炎
高校1年生男子バスケットボール選手です。新1年生の入部時スクリーニングで膝の痛みを訴えていました。問診票では有痛性分裂膝蓋骨と申告されていたのですが、疼痛部と合致しなかったので徒手検査とエコー検査をおこないました。
徒手検査では所見はありませんでした。ROM検査では非荷重での伸展・屈曲とも問題ありませんでしたが、荷重位では屈曲130°で痛みが大腿骨内顆に出現しました。エコーでは内側の膝蓋-大腿関節の軟骨・下骨に連続性の不整列が確認できました。
OCDを疑い総合病院にて受診しOCDの確定診断を受け今後の対応を顧問の先生と協議しました。
●膝を曲げ関節軟骨が露出した状態でエコーをとりました。
●画面中央の黒い部分が軟骨です。表面のきれいなカーブがなくなっています。また、その下の白い線の下骨の表面も不整列が確認できます。
●膝を曲げた状態で膝蓋‐大腿関節を撮影しました。
●エコー画像で画面左の軟骨(黒色)と下骨(白色)の不整列が確認できます。
●MRI画像です。画面左が矢状断(前後に切った)、右が前額断(左右に切った)映像です。
●内顆の関節面に下骨の欠損が確認できます。
ケース2:大腿骨内顆離断性骨軟骨炎
中学1年男子サッカー選手です。日常では痛みがないのですがサッカーをすると膝に痛みが現れるという事で来院されました。症状が上記に合致したので、徒手検査で他のケガの可能性を除いておいてエコーをとりました。
●図左:画面左(健側)の関節軟骨と画面右(患側)です。患側の軟骨と下骨が損傷しているのがわかります。
●図右:患側の拡大した映像です。
病態と予後の説明をご両親にさせていただきました。最初はとまどっておられましたが、理解していただき総合病院で診察および手術をされました。
結果的に手術が必要となりましたが、早期の発見だったので低侵襲な方法を選択することができました。
●手術後4か月のエコーです。軟骨と下骨がきれいに再生されています。
ケース3:上腕骨小頭離断性骨軟骨炎
高校1年女子バドミントン選手です。日常では痛みがないのですが、新入生スクリーニングにで肘関節の屈曲が健側と比較して−5°、伸展が-5°であったので精査しました。
既往歴には、肘関節のケガは未記入だったのでが、問診をすると中学の頃に、たびたび肘が腫れてはアイシングをしていたということでした。
エコーでは、肘関節屈曲位・伸展位とも小頭の軟骨下骨に何かしらの損傷が確認され、ROMの低下があったので医療機関にて精査していただきました。
●屈曲位での上腕骨小頭のエコー画像。 ●伸展位でのエコー画像。
●両映像とも小頭に軟骨下骨の損傷が確認できます。
●患側(左)と健側(右)の比較です。
●CTでは小頭と肘頭にも遊離した骨片が確認されました。
●診断は、OCD(遊離期)でした。
大会の時期を考慮し、遊離した骨片を取り除く手術を行っていただきました。
●関節鏡の進入路は4か所でした。術後で浮腫などがありましたが、すぐに軽快しました。
遊離した骨片を取り除くだけの手術だったので、1か月後の試合には出場できるように準備しました。
術後2週間で、屈曲は-10°程残りましたが、伸展は+5°まで回復し、握力も術前とほぼ同程度まで回復しました。なんとか無事に試合に出場を果たしました。
病態や手術方法の違いにより経過が異なりますので、担当医とよく相談をして下さい。