【症例の紹介】
就寝中、朝方に足関節や足の指の付け根(特に拇趾)に痛みを感じ目が覚めた。よく見ると赤く腫れあがっていて、その腫れが足の甲まで広がっている。
特に、捻ったりぶつけた覚えがなく、しいて言うなら昨日は運動で軽く汗を流したくらいだ。
この様な症状がある場合は、痛風を疑います。
痛風は、血中の尿酸濃度が上昇する高尿酸血症の発作症状です。一昔前、痛風は「贅沢病」なんて言われていましたが決してそうとは言い切れません。また、プリン体の多い食事をすると発症するとも言われていますがそれも100%正しいとは言えません。
体質により体内で尿酸を過剰に生成してしまったり、尿で尿酸を体外に排出する能力が低い方がよく発症するようです。そのような体質の方が、高カロリーの食事をしたりアルコールを摂取すると発生リスクが高まります。
●足関節に発症した痛風です。発赤、腫脹、の他に浮腫(むくみ)を伴っています。
関節内に蓄積した尿酸結晶が、運動などで関節内に散布されると、関節内の免疫機構が異物と判断し攻撃を始めます。これが急性炎症を引き起こし痛みが一気に劇症化します。
ちなみによく似た症状で、尿酸が原因ではなくピロリン酸カルシウムの原因で発症する偽通風というのもあります。痛風は40歳代以降の男性で比較的小さい関節に発症します。偽通風は高齢者で大きい関節に発症すると言われていますが、どちらの疾患もどの関節にも発症する可能性があります。
症状は、①激痛(朝方に痛くなり寝ていられなくなる)、②関節の腫脹(関節が腫れたりその周囲がむくむ)、③発赤(皮膚が赤く変色する)、④熱感(熱を持っている)、⑤関節に液体貯留、⑥発生が不明瞭(ケガとなる原因がない)などです。
特に、関節の痛みや液体貯留の場合は、化膿性関節炎や関節リウマチなどの鑑別が必要なので、上記の症状がある場合は必ず医療機関にかかるべきです。
痛風の対処方法は、NSAIDs(非ステロイド系消炎剤 例:ロキソニン等)の服用ですが、初めて痛風に罹患された方は炎症が完成してからの服用になるので2~3週間は炎症症状が続く場合もあります。痛風は、独特の痛み方をしますので(経験した方ならわかると思います)、痛みの気配を感じたら早めのとんぷく服用が効果的です。
また、痛風はあくまでも発作なので、疾患の本体は高尿酸血症ということを忘れてはいけません。
高尿酸血症は、動脈硬化や脳卒中などの循環器系疾患の原因になりますので痛みがなくなれば治ったと勘違いしないで継続して医療機関にかかってください。
尿酸値が7.5程度でも頻回に痛風が発症する方もおられますし、9.0でも無症状の方もおられます。
生活習慣病は早期発見・早期治療はとても大切ですので、痛風発症を嘆くのではなく早期発見できたと前向きに考えてみてはいかがでしょうか。
痛風かなと思われたら、まずは医療機関にかかって下さい。