【症例の紹介】
バドミントンに限らず、足底の胼胝や魚の目が痛んだり皮がめくれたりする選手から相談を受けます。皮膚科領域のケガですので専門医の受診を勧めます、しかし試合中や練習の現場では応急処置を施すことがあります。
皮膚は、表面から表皮・真皮・皮下組織の順で層になっています。また、表皮は角質層・顆粒層・有棘層・基底層の4層で構成されています。表皮は0.1㎜程度の厚さで血管や神経の分布がありません。スポーツ選手は、特定の部位にストレスが繰り返しかかるので表皮が胼胝などに変質し分厚くなります。分厚くなった表皮と真皮の間に軋轢が生じ引き裂かれるようにめくれます。真皮は神経受容器が富に分布していますので直接触れるととても痛いです。
表皮がめくれて真皮があらわになれば治癒へと向かいますが、表皮と真皮に軋轢があるにもかかわらず表皮がめくれていないケースでは、その空間に液体が貯留したり、時には膿がたまっていたりします。この場合は、皮下での内圧が上昇しとても痛むので、専門の医療機関で排膿してもらう必要があります。
一般的には第1中足骨頭(拇趾球)に発生する事が多いですが、バドミントンでは踵部(かかと)や第2・3中足骨頭部に多く発生します。競技特性やバドミントン選手の足が開帳足や扁平回内足を呈しているのに起因しているのではないでしょうか。
現場での応急処置は、①衛生管理、②ドレッシング(被覆)です。
1). 2~3分ほど流水で患部を洗い流します。創部はもちろんですが、皮膚が残っている場合は黄色ブドウ球菌などの常在菌が多く存在しますので、皮膚もしっかりと洗い流します。
2). 創部を皮膚で覆うようにしその上からプラスモイストでドレッシング(被覆)します。皮膚と創部が擦れて痛い場合はワセリンなどを塗るのも一つの方法です。また、ガーゼなどは線維の一部が皮膚に癒着しますので使わない方がよいと思います。
●プラスモイストを適当な大きさに切り、皮膚に直接あてがいます。
3).ドレッシングしたプラスモイストをテガターム(粘着性フィルム)でずれない様に固定します。プレーを継続しなければこの状態に包帯などで被覆して応急処置は終了です。
●サージカルテープなどで止めるよりフィルムを使用した方がドレッシング材がずれにくいです。
4).プレーを継続しなければならない場合はテガタームの上からライトテープでさらにずれないように固定します。
●ライトテープは、後ろから前へ貼るとはがれにくいです。また、足趾の付け根まで巻いた方がずれにくいです。
5).踵の場合は、その上からヒールカップを装着します。
●ドレッシング材をテーピングで固定した上から使用します。
何故、皮膚がめくれるかは用具の問題、選手の足の運び方、汗をかきやすいなど様々です。その中でも特に、中敷き(インソール)の材質や形状に着目し試行錯誤を重ねている途中です。また、良い結果が得られれば報告させていただきます。