【症例の紹介】
ラケット競技では、手指の痛みを訴える選手が多いです。練習量やグリップ方法が痛みの原因になります。
第1選択では、疲労骨折等の有無を医療機関で確認していただきます。骨折の可能性がない前提で他のケガを精査していきます。
痛みの部位、痛みの種類(ジンジン?ピリピリ?ズキズキ?…)、痛む動作などをよく問診し、関節炎、靭帯損傷、腱・腱鞘炎、骨端症などの鑑別を行います。
特に、バドミントンは軽いラケットを手指で操作することが多く、選手が痛みを訴えてきた場合にグリップ方法の確認をする必要があります。
ケース1:右示指の痛み(第1背側骨間筋コンパートメント)
10代の女子バドミントン選手です。練習量の増加に伴い、利き手示指(人差し指の内側~手の甲)のかけてジンジン・ズキズキと痛みがありました。
医療機関の画像診断では、骨折の疑いがなく少し休むようにと指示がありました。
●指さしている場所が痛みを強く発生している部位です。
練習量を落とすと痛みは軽減されるのですが、再開すると痛みが再発するを繰り返していました。
エコー画像では、関節炎や腱・腱鞘炎にみられる低輝度の画像はなく、圧痛が第2中手骨の橈背側に限局していることから第1背側骨間筋になんらかの原因があるのではと疑いました。
●模型で第1背側骨間筋(赤い色の筋肉)の位置を指しています。
●実際の位置(①)です。
●背側骨間筋の働きは、閉じた指を開きます。
また、グリップを確認すると、示指(人差し指)をかけるように握る特徴的なグリップ方法でした。
●示指(人差し指)の内側(橈側)でグリップを押す様に握っています。
ショットの際にグリップに示指(人差し指)が押され、第1背側骨間筋が伸展強制されてしまい、筋膜に覆われた筋内圧が上昇し痛みが発生してしまいます。(コンパートメント症候群:コンパートメントとは区画という意味です。筋膜は伸びないので、筋が炎症を起こし腫れると筋膜内の圧が上昇し筋膜のセンサーが痛みを感じ取ります。)
対処方法は様々ですが、当院では、患部に超音波を照射しています。
また、ラケットを振る際にはテーピングにより第1背側骨間筋の伸長ストレスを軽減するようにしています。
●25㎜幅のキネシオテープを使用します。基節骨遠位(第2関節の手前)に小指側から親指側に人差し指を引っ張るようにテープをはります。この時の、人差し指の開き具合でテーピングの強度が決まるので、ラケットの振りやすさと痛みの軽減具合でいいポジションを見つけてください。
●そのまま手首までテープをはっていきます。
●手掌側にテープがあるとグリップに張り付いて不快な場合は、手背側にテープを持ってきます。
●手首と指の関節部などテープが剥がれやすい部位を38mmの非伸縮テープで押さえて完成です。