【症例の紹介】
足の甲(足背)に突然の痛みと腫れが現れ、歩くことすらできなくなるほどの激痛を伴う。
痛みは舟状骨周囲が強く、腫れは赤く熱を持っているようだ。
この様な症状で第一に疑うのは疲労骨折です。疲労骨折の確定診断はレントゲンやMRIの画像診断で行います。しかし、骨折がないにも関わらず痛みを訴えるケースがあります。
このページでは、疲労骨折の可能性が画像診断で除外された前提で痛みや神経症状がある場合について話をすすめていきます。
足背側には、足趾を持ち上げたり足首を持ち上げたりする腱が存在します。それらの腱が浮き上がらないようにベルト状の靭帯(伸筋支帯)のようなもので押さえられています。その様な限られたとても狭い空間(管)を腱・神経・血管が通過しています。その部分を靴紐やシューズのベロによって圧迫を受けると神経を圧迫し拇趾と示趾の付け根の間に痺れや痛み、知覚鈍麻が発症します。この障害を前足根管症候群と呼びます。
●伸筋支帯と神経の解剖学的位置 ●神経と拇趾を動かす腱の解剖学的位置
●神経症の現れる部位
また、ガングリオンなどの発生により同様の機序で前足根管症候群は発症します。
ガングリオンとは、内容物がゼリー状の滑液で関節包(滑膜)の一部が局所的に膨らんで腫瘤になったものを言います。ガングリオンは、滑膜が存在する関節や腱鞘周囲であればどこにでも発生します。関節や腱鞘に繰り返し軽微な外力がかかったり、単回数でも大きな外力が加わることで発生します。袋の一部が膨隆しガングリオンが発生します。
ガングリオンが拇趾を動かす腱の周囲に発生し、腱を圧迫したり、近くの神経を圧迫することによって前足根管症候群が発症します。
●高校生女子バドミントン選手の足背に発生したガングリオン。画面ではわかりにくいのですが足背が腫れて盛り上がっています。
●エコーでは、腱と骨に挟まれるようにガングリオン(黒く見える部分)が発生していました。
(皮下になく表面から確認できないガングリオンをオカルトガングリオンと呼びます)
バドミントンでは右が利き腕の選手は、左足の拇趾でコートを蹴り出しますので、拇趾に繰り返しストレスがかかります。他競技と比べるとガングリオンの発生しやすい競技ではないでしょうか。
対策は、一度できたガングリオンは完全になくなることは難しいので、対処療法で経過観察します。頻回に症状が出現する場合は、外科にてガングリオンがある嚢胞の切除も視野に入れます。
対処療法は、ガングリオンが神経を圧迫しないようにラバーパッドで空間を作ります。
また、患部に超音波を照射することも有効です。
●ホームセンターなどで購入できる5㎜厚のラバーパッドを馬蹄形に切り出します。足のサイズに合わせて適当な大きさのものを作成します。
●靴下の中にラバーパッドを直接に入れます。靴下で押さえれば、テープなどをしなくてもパッドがずれるずれる心配がありません。
●装着場所は、ガングリオンが馬蹄形の空間に来るようにあてがいます。
●ほとんどの場合、数週間で痛みは軽快します。痺れが消失するにはもう少し時間がかかるかもしれません。